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セラミック栽培法を利用したシロイヌナズナ簡易形質転換

Abstract
シロイヌナズナは植物分子生物学の分野において頻用されるモデル植物であり、ポストゲノムの時代を迎え、大量の形質転換体の作製が必要となってきた。現在は主として減圧浸潤法によるアグロバクテリウム属細菌の感染により形質転換体の取得が行われているが、従来の土壌を用いた栽培植物への感染は、ある程度のノウハウが必要である上に、感染前後の植物育成に注意を要する。そこで我々は土壌を使わずセラミックのチューブを用いて栽培した栽培した植物体を材料とした。pBI121ベクター(Clontech)(カナマイシン耐性遺伝子をマーカーとし、35Sプロモーターの下流にGUS遺伝子を持つ)を導入したアグロバクテリウム(EHA105株)を減圧浸潤法により60個体に感染させ、開花結実後、回収した約10000粒の種子の約半数(5000粒)を播種し、7個体の形質転換体を得た。本結果は、従来法とほぼ同じ形質転換効率であった。現在、当該セラミック栽培シロイヌナズナシステムを用いて、形質転換のオートメーション化を目指し、プロセスの改良を試みている。

Introduction
シロイヌナズナは植物分子生物学の分野において頻用されるモデル植物であり、ポストゲノムの時代を迎え、大量の形質転換体の作製が必要となってきた。*1 現在、シロイヌナズナの形質転換法としては減圧浸潤法によるアグロバクテリウム属細菌の感染による手法が用いられている。*2この手法においては摘心の時期や感染時の植物の健康状態、感染に用いる植物体数などが非常に重要であり、研究室レベルでの実験の際にはその栽培スペースの確保なども大きな問題点となっている。そこで我々は土壌を用いずセラミックのチューブを用いて植物を栽培することで扱いの簡便さの向上および栽培スペースの省スペース化を図った。セラミックス植物栽培システムは、非常に小さな連続孔(3μm以下)を数多く持った特殊セラミックが持つ毛細管力により、吸収・保持された溶液を利用したシステムであり、種々の特徴と利点を有する。(文献:赤井龍男 本城尚正 桑垣瑞 飯田智子 1998 :多孔質セラミックボードによる植物栽培法、日本植物工場学会 Shita Report次世代植物工場への新展開、14、37-47)
水源から植物根までの水の移動は、水源とセラミックス、セラミックスと根、それぞれの接点での吸引力の差に基づいておこなわれ、シロイヌナズナが吸収・保持された溶液を利用した分だけセラミックが乾燥し、セラミックが乾燥した分だけ毛管力が回復し、再びセラミックが溶液を吸収・保持する給水栽培システムで、常に植物体に溶液を過不足なく供給する。これにより、乾燥や多湿潤に弱い植物を安定かつ簡便に育成することができる。
 また、均一な素材・方法で製造し高温で燒結させた特殊セラミックスは、基材として優れた耐久性、同一性を有しており、23℃・3000lux連続照明の栽培条件等を維持する事で、成育度合の相関性が高いシロイヌナズナを再現的に栽培できる。



Results and Discussion
セラミック栽培法を用いたシロイヌナズナ60個体への感染後、得られた種子は約10000粒であった。この得られた種子のうち約半数をカナマイシン選択培地に播種し、7個体の形質転換体が得られた。この結果と従来法での結果とを比較すると、土壌を用いた栽培植物への感染とセラミック栽培法を用いた植物への感染における形質転換効率はほぼ同程度であった。(table)
セラミック栽培法は土壌栽培よりも1植物体あたりに必要な栽培面積が少なくて済むため(土壌栽培:54植物体/30×40 cm、セラミック栽培:63植物体/46×20 cm)人工気象機などの限られたスペースでより多くの植物体を栽培することが出来る。故により多くの植物体に対して感染を行うことが出来ることから実際の形質転換効率以上の効果が期待できる。
さらに、このセラミック栽培法は土を用いていない、1本のセラミックスチューブに1植物体で栽培されているなどの理由から取り扱いの容易さという点で優れており、また成育度合が揃っているので組み換え不能の無駄がなく、これらの利点を活かして形質転換のオートメーション化、さらには遺伝子の機能の網羅的解析を目指してプロセスの改良を試みている。




Experimental procedures
・ceramic culture of Arabidopsis thaliana
播種・初期栽培用セラミックスチューブ(外径14mm、内径9mm、高さ45mm)を液体肥料1(ハイポネックス 0.1%)を加えた水に浸し、湿ったセラミックスチューブ内側上端部に種を張り付けていく。
23℃、3000lux連続照明下で約4週間栽培した後、拡大成長用セラミックスチューブ(外径14mm、内径9mm、高さ85mm)を液体肥料2(NaH2PO4・2H2O 1.5mM Na2HPO4・12H2O0.25mM MgSO4・7H2O1.5mM Ca(NO3)2・4H2O 2mM KNO3 3mM Na2・EDTA 67μM FeSO4・7H2O 8.6μM MnSO4・4H2O 10.3μM H3BO3 30μM ZnSO4・7H2O 1.0μM CuSO4・5H2O 1.0μM (NH4)6・Mo7O24・4H2O 0.024μM CoCl2・6H2O 0.13μM)を加えた水に浸し、湿ったセラミックスチューブ内側面に根が接触するように植えかえる。
再び、23℃、3000lux連続照明下で、約4週間栽培した。


1.K. Inaba, T. Fujiwara, H. Hayashi, M. Chino, Y. Komeda and S. Naito (1994) Isolation of an Arabidopsis thaliana mutant, mto1, that overaccumulates soluble methionine: temporal and spatial patterns of soluble methionine accumulation. Plant Physiol. 104: 881-887.


・Plant transformation
Agrobacterium tumefaciens (EHA105) containing the binary vector pBI121 were grown with kanamycin 100mg/l for 48h at 28 ℃ in LB medium (full growth). After centrifugation, the bacterial pellet was resuspended in the infiltration medium (IM), at twice of the initial culture volume (IM = 1/2 Gamborg’s B-5 Medium containing 0.1 % hyponex 5-10-5, 1 % Sucrose, 0.02 % Silwet L-77 and 0.044 mM 6-benzylaminopurine). 10 upside-down plants were immersed in 300 ml of Agrobacterium containing IM medium in 500 ml beaker. (Fig. 1B) And three Beakers were put under vacuum (50 kPa) for 5 min in vacuum chamber. Infiltrated plants were stood on tray as before. (Fig. 1A) All port handling of treated plants until harvested were with latex gloves. Four to six weeks after planting, about 10,000 T1 seeds were harvested. About 5,000 seeds were sown on selection medium (1/2 Murashige and Skoog medium containing kanamycin 100mg/l). 2 weeks later, transformed plants were selected.

1.The Arabidopsis Genome Initiative : Analysis of the genome sequence of the flowering plant Arabidopsis thaliana, Nature, 408, 796 - 815 (2000)
2.Nicole Bechtold, Jeff Ellis, Georges Pelletier : In planta Agrobacterium mediated gene transfer by infiltration of adult Arabidopsis thaliana plants, C. R. Acad. Sci. Paris, Sciences de la vie/Life sciences, 316, 1194-1199 (1993)

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